American Journal of Enology and Viticulture
       論文要旨 和訳


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Volume 63, No.2 (2012)
B. Guerra, K.Steenwerth
Influence of Floor Management Technique on Grapevine Growth, Disease Pressure, and Juice and Wine Composition: A Review
pp149-164 [
英文要旨原文]
[ブドウ樹の生長、病害圧、および果汁とワイン組成における表土管理の影響(総説)]
ブドウ園の表土管理は雑草制御、土壌保全を増進し、樹勢を制御するために土壌資源の利用度を低下させ、ワイン品質における望ましい様相に効果を与えることを含む多様な到達点をもつ。この総説では、多くの栽培地域(オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、ヨーロッパおよび合衆国西部)において耕起、雑草制御、草生、マルチが樹体の生育とバランス、病害圧、収量および果汁とワインの品質に及ぼす影響について述べ、実用技術への提案および調査研究に対する要求を強調する。各数十年間、耕起や除草剤使用に比べてマルチや草生についてより多くの報告が発表されており、このことはブドウ園における草生やマルチに対する関心が強いことを示唆している。草生は土壌と樹体の健康を改善する可能性をもち、多くの気候および土壌に適応でき、草種の成育期間の長さ、表土に対する被覆程度、競争力のような指標を調節することにより樹勢に影響を与えると考えられる。草生は果汁固形成分、アントシアニン、その他のフェノール物質を増加させ、滴定酸度とpHを低下させる。これらは草生をしていないブドウ樹からのものより優れた赤ワインとしての品質となる。有機物マルチは樹体バランス、土壌の水分含量と破砕性を改善し、樹勢を高め、病原菌や害虫の圧力を低減する。プラスチックや織物マルチは高い設置コストのため実用的ではない。火炎除草や土壌蒸気消毒などの新しい技術は、雑草の生育段階における適期や雑草種により感受性が限定されるものがあるなどの困難性のため適用が限られている。栽培管理法と土壌特性、ブドウ樹の反応、ブドウ果実とワインにおける組成および官能特性をつなげる機械的な取り組みを行う多数年にわたる多様な学問分野における研究が発展する必要がある。

L. F. Bisson
Geographic Origin and Diversity of Wine Strains of Saccharomyces
pp. 165-176 [
英文要旨原文]
[ワイン用Saccharomyces株の地理的由来と複雑さ]
多様な地理的由来と表現型を有するSaccharomyces株の巨大なコレクションから、ゲノム配列情報が利用可能であることから、酵母株の多様性の2つの構成成分である、ゲノム組成と表現型の進化の詳細な分析が可能になった。この分析は、ワイン酵母の由来を比較的完全に描くことを可能にした。多くのゲノム分析にて、S. cerevisiaeのクラスターは非常に類似した群として表れるが、ゲノムの類似性から予想されるものとは異なる表現型を示すものがある。ワイン株の多様な変化には、自然および人為的選択、更に遺伝的なゆらぎが主要な役割を果たしている。表現型の多様性は非常に激しいので、生物的、発酵的にワインの特質に寄与するものとして、一つの株が、その全てを代表することはない。更に、市販酵母および土着の酵母が、異なる酵母に由来するDNA領域、イントログレッションを有することが判明し、異なる属や種の酵母が細胞融合を起こしていることが示唆された。配列比較分析により、我々の酵母系統の知識が洗練され、ワイナリーやブドウ園の酵母集団の表現型進化の説明が提供される。

L. Guan, Ji-Hu Li, Pei-Ge Fan, S.Chen, Jin-Bao Fang, Shao-Hua Li, Ben-Hong Wu
Anthocyanin Accumulation in Various Organs of a Teinturier Cultivar (Vitis vinifera L.) during the Growing Season
pp. 177-184 [
英文要旨原文]
[成育期間にわたる品種Teinturierの様々な組織におけるアントシアニン蓄積]
ブドウ品種Teinturier Yan-73における様々な組織におけるアントシアニンの組成と濃度を成育期を通して調査した。HPLC-MSによりモノグルコシドとその誘導体として19のアントシアニンが同定された。ブドウの組織間および成育段階によりアントシアニン組成と濃度が変化した。果皮アントシアニンは主にマルビジン誘導体であったが、果肉で最も多いアントシアニンはペオニジン誘導体であった。Carpopodia(果粒の接着部位の肥厚した果梗)、果梗、葉身、葉脈、葉柄および新梢基部の生きた樹皮において優占する組成はマルビジンとペオニジン誘導体であった。果皮と果肉においてベレゾン前はアントシアニン濃度が非常に低く、ベレゾン期以降、急速に増加した。Carpopodiaおよび果梗のアントシアニンも、果皮と果肉より遅れたが、急速に増加した。アントシアニン濃度は幼葉および老化した葉身で高く、展葉し成熟した葉身では低かった。アントシアニンは葉脈と葉柄組織および樹皮では成育期間を通してほとんど変化がなかった。

N.A. Bokulich, Chin-Feng Hwang, S. Liu, K.L. Boundy-Mills, D.A. Mills
Profiling the Yeast Communities of Wine Fermentations Using Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism Analysis
pp. 185-194 [
英文要旨原文]
[末端標識制限酵素断片多型(T-RFLP)分析によるワイン発酵酵母集団のプロファイリング]
T-RFLP分析は細菌集団の分析に多用されるが、ワインや他の発酵物の混合酵母の分析も高速高性能、低コストで可能である。本研究では、ワインおよび食品発酵に関与する121酵母株(24属72種)を含む、T-RFLPのデータベースを構築し、酵母の同定と判別を行った。このデータベースは非常に感度の高い識別能があり、強力な同種内の保存T-RFLPプロファイルを有することから、混合酵母の信頼性の高い同定が可能である。このデータベースを用い、2つのビンテージの甘口貴腐ワインの分析を行い、複雑で多様な発酵系の酵母集団を検出し、速く定量的に酵母の違いを同定でき、本法の有用性が証明された。

L.Rolle, F.Torchio, S.Giacosa, S.Río Segade, E. Cagnasso, V.Gerbi
Assessment of Physicochemical Differences in Nebbiolo Grape Berries from Different Production Areas and Sorted by Flotation
pp. 195-204 [
英文要旨原文]
[異なる生産地と浮選法から得たネッビオーロ果粒における物理化学的差異の調査]
環境要因に帰するブドウ園、圃場におけるブドウの変異性は、成熟過程に、そしてブドウ果粒の物理化学的特性に差異をもたらすと考えられる。この変異性は異なる生育地の間でしばしばより高いものとなる。自動密度式果粒選別機が近年開発され、密度により均質なブドウ果粒とすることによって、この変異を削減するためにワイナリーでの使用が提案されている。密度式果粒選別は、果粒の目的とする品質指標に従って密度を選択することが必要である。この研究の目的は、同じ日に収穫したネッビオーロ果粒の、機械的特性、フェノール組成および抽出性の指標のようなさまざまな目的とする指標の間の関係を決定することである。すなわち、1069から1125 kg m3の範囲の密度となる異なる濃度の塩類溶液中に浮かせることで評価し、これらの関係性について栽培地の影響を調査する。結果は、適度な密度を決定するための最も信頼できる物理化学的指標は果皮の総アントシアニンフラボノイド濃度、および種子の総フラボノイド、プロアントシアニジンオリゴマー濃度含量、および果皮の堅さと厚さであること示した。しかしながら、果粒の密度とこれらの指標との相関関係はブドウ園の効果に依存することから、密度式選別は同じ生産力をもつ地帯に属する個々のブドウ園あるいはブドウ園内の同質のグループにおいて生産性を上げることは間違いない。果粒の密度式選別法は、ブドウを様々な品質指標で分離するのに使用することも可能である。

C.Delsart, R.Ghidossi, C.Poupot, C.Cholet, N.Grimi, E.Vorobiev, V.Milisic, M.M.Peuchot
Enhanced Extraction of Phenolic Compounds from Merlot Grapes by Pulsed Electric Field Treatment
pp. 205-211 [
英文要旨原文]
[パルス電界処理によるメルロー・ブドウのフェノール化合物の高抽出]
パルス電界処理のワイン発酵工程とワインの特徴に及ぼす影響を調べた。特にブドウの短時間(40~100 ms)、パルス電界前処理(500~700 V/cm)による、メルロー・ブドウのアルコール発酵中および瓶詰め7ヶ月後の色素強度、アントシアニン、フェノール化合物の生成に及ぼす影響を調べた。発酵中の有用化合物の抽出に関する動力学を確立した。官能的に、パルス電界処理をしていないものと比較した。その結果、パルス電界処理によりメルロー果皮の透過性が増大し、ポリフェノールとアントシアニン抽出が増加した。中程度の強度のパルス電界短時間処理は、フェノール化合物の細胞膜の流動性を上昇した。古典的な方法と比べ、パルス電界処理は非加熱選択抽出(< 5℃)であり、産物の品質ロスがない。フェノール化合物はワイン醸造において、官能的に、発酵中および熟成工程でも重要な役割を有している。官能分析の結果、パルス電界処理はワインの官能的特徴を増強することが示された。この技術は、現在の発酵前処理技術の興味ある代替法であると思われる。

G.P.Parpinello, H.Heymann, S.Vasquez, K.A. Cathline, M.W. Fidelibus
Grape Maturity, Yield, Quality, Sensory Properties, and Consumer Acceptance of Fiesta and Selma Pete Dry-on-Vine Raisins
pp. 212-219 [
英文要旨原文]
[FiestaおよびSelma Peteの樹上乾燥レーズンのブドウ熟度、収量、品質、官能特性および消費者受容性]
適期の枝切除が樹上乾燥(Dry-on-Vine; DOV)レーズン製造過程における重大な最初のステップである。もし、枝の切除が早すぎれば、果粒は上十分な可溶性固形物となり、収量と等級が限定される。いっぽう、遅すぎれば、果粒は十分に乾燥しない。さらに、乾燥時の果粒熟度はレーズンの官能特性、その結果として消費者の受容性に影響すると考えられる。このようなことから、研究はDOVレーズン用の二つの重要な品種FiestaとSelma Pete(Vitis vinifera L.)の果粒熟度とDOVレーズンの収量と品質との関係を3年間にわたり調査した。加えて、それぞれの品種の熟度の低いものから高いものまでから造られた最良等級“B and better” のレーズンの官能特性と消費者の受容性について1年間調査した。果粒の可溶性固形物レベルとレーズン等級に、トレイ乾燥レーズンで得られたものと同様な正の曲線相関関係があった。しかしながら、トレイ乾燥レーズンから予測された結果に比べ、特に可溶性固形物18 Brix未満と20 Brix以上の分類の果粒においてDOVレーズンは比較的高い等級を示した。レーズン収量、水分含量、および品質等級は収穫年と枝切除日により変動したが、概してこれらの変動の許容できるバランスは、Fiestaで19 Brix、Selma Peteで21 Brixの時点で枝切除を行うことにより達成できた。しかしながら、消費者受容性のデータは、ほとんどの人がSelma Peteの方を好み、Fiestaについて言えばより熟度の高いブドウ、すなわち乾燥時に20 Brix以上のブドウからつくられたレーズンが好まれた。Fiestaでは20 Brixと適度な乾燥を一貫して達成することは困難と考えられるため、DOVレーズン生産のためにはSelma Peteが優れた品種であると示唆された。

V.Canuti, S.Puccioni, G.Giovani, M.Salmi, I.Rosi, M.Bertuccioli
Effect of Oenotannin Addition on the Composition of Sangiovese Wines from Grapes with Different Characteristics
pp. 220-231 [
英文要旨原文]
[種々の特徴のブドウから得たサンジオベーゼ・ワインへのエノタンニン添加効果]
種々のタイプのエノタンニンを種々の組成のサンジオベーゼぶどうおよび生成ワインに添加し、色素強度、色調、全フェノール指標、モノマーおよびポリマー色素含有量など色素パラメーターを測定した。エノタンニンは2003年に、二つの栽培地から収穫したブドウについて、発酵前および発酵後添加試験を行った。2004年には、2003年に最も成績の良かったエノタンニンを使用し、ブドウ熟度の違いについて試験した。種々のエノタンニンの反応はブドウの特徴により異なり、没食子およびブドウ種子由来のタンニンが、6ヶ月貯蔵後にも色素を安定化し、増強した。同じタンニンはワイン色の安定化にポジティブに影響し、あまり熟していないブドウを使用したワインへの効果が高かった。エノタンニンの添加時期とブドウの特徴は、色素の強度及び安定性に顕著に影響した。ブドウのフェノール成分の熟度を評価し、エノタンニンの使用を合わせることにより、ワインの色調を改善することが可能になる。

Jun-Feng Zou, Zhen-Xue Peng, Hui-Juan Du, Chang-Qing Duan, M.J. Reeves, Qiu-Hong Pan
Elemental Patterns of Wines, Grapes, and Vineyard Soils from Chinese Wine-Producing Regions and Their Association
pp.232-240 [
英文要旨原文]
[中国のワイン製造地域のワイン、ブドウ、ブドウ園の元素パターンとその関係]
中国のワイン生産7地域の土壌、ブドウ、ワインについて、28種の微量元素および16種の希少元素の分析をICP-MSにて分析した。分散分析から、ブドウとワインのほとんどの元素および土壌の元素の半分は、地域により統計的に有意に異なった。段階的線形判別分析(SLDA)の結果22のパラメーター(Cr, Co, Ni, Ga, Se, Y, Zr, Nb, Mo, Pd, In, La, Pr, Sm, Eu, Gd, Tm, Yb, Au, Tl, Th,U)が93.5%の正確さで土壌を評価でき、17のパラメーター(Li, Co, Se, Sr, Zr, Mo, Pd, Cd, In, Ba, La, Ce, Pr, Eu, W, Pt, Au)が96.5%の正確さでブドウを評価でき、10のパラメーター(Sc, V, Cr, Ga, Se, Sr, Pd, Sn, Tl, U)が100%の正確さでワインのオリジンを区別できた。ピアソンの相関分析により、ブドウと土壌およびワインとブドウには良い相関が認められたが、多元素に関し、ワインと土壌の相関は弱く、原料分析の3クラスに対し、2つの元素(SeとPd)が共通のSLDA記述子であった。土壌記述子によるブドウの判別およびブドウ記述子によるワインの判別により、地域の相違によるワインの多元素パターンの相違は、土壌の地球化学における変化によることが示唆された。

L.M.Dooley, R.T. Threlfall, Jean-François Meullenet, L.R. Howard
Compositional and Sensory Impacts from Blending Red Wine Varietals
pp. 241-250 [
英文要旨原文]
[赤ワイン品種のブレンドの組成的、官能的インパクト]
ワイン消費者は赤ワインの健康効果の成分、フレーバーや色に寄与する成分に興味を持っている。Vitis viniferaワイン(Cabernet Sauvignon, Merlot, Zinfandel)を単純重心混合デザインにて、ブレンドし、10種のワイン(3つの単一成分ワイン、3つの2種ブレンドワイン、4つの3種ブレンドワイン)を調製した。15℃で12ヶ月保存し、ワインの組成と色素成分を分析し、30日目には、記述的官能試験および消費者による評価を行った。ブレンドはワインの組成および官能プロファイルにインパクトを与えた。12ヶ月の貯蔵中、ブレンドワインは、単一のワインと同様の組成および色の挙動を示した。即ち、総アントシアニンは減少し、赤色濃度と重合ワインカラーは増加した。液クロで検出される主要なアントシアニンはマルビジン-3-O-モノグルコシドであった。アントシアニンは貯蔵中に減少し、縮合反応でプロアントシアニジンが形成された。ワインの記述分析および成分分析を比較したところ、赤色強度と色の深さは透明度、フレーバー強度、赤色濃度、L*、クロマ(彩度)、総アントシアニン含量、重合カラー含有量と相関(r > 0.85)した。消費者評価と組成分析を比べたところ、ワインの外観からの好感度は赤色濃度と(r = 0.83)、総アントシアニンと(r = 0.85)、重合カラー%と(r = 0.93)正に相関し、L*と(r = 0.99)、彩度と(r = 0.91)、色調と(r = 0.99)負に相関した。ライトボディのワインにフルボディのワインをブレンドすると、消費者にはポジティブに影響した。官能および組成分析データは、V. viniferaワインのブレンドの全体として重要なパラメーターを決定する為使用可能である。

R. P.Schreiner, I.A.Zasada, J.N.Pinkerton
Consequences of Mesocriconema xenoplax Parasitism on Pinot noir Grapevines Grafted on Rootstocks of Varying Susceptibility
pp.251-261(Research Note) [
英文要旨原文]
[感受性の異なる台木に接ぎ木したPinot noirブドウ樹におけるワセンチュウの1種Mesocriconema xenoplax寄生の結果]
ワセンチュウ(Mesocriconema xenoplax) に対する抵抗性に差異のあることが知られている自根と5種の台木に接ぎ木したピノ・ノアール樹においてワセンチュウに対する抵抗性の耐久性を評価し、ワセンチュウ寄生がブドウ樹の地下部と地上部の成育と生理にどのような影響を与えるかについてよりよく理解するために4年間の研究を行った。3種の感受性ブドウ(自根、3309C,1103P)の接種プロットにおけるワセンチュウ個体数は2年目で急速に増加し、研究期間中高く維持された。一方、以前に抵抗性台木と知られる2種の台木(110R、101-14)では、3年目に増加した。4年間ずっと抵抗性を維持したのは420Aのみであった。ワセンチュウの樹体に対する影響は、感受性台木と自根における細根生長とアーバスキュラー菌根菌(AMF)の定着の減少が最も顕著であった。ワセンチュウによる細根の生産とAMF定着の低下は、感受性のブドウ樹で経年的に大きくなった。AMF嚢状体を含む細根の頻度はワセンチュウの個体数が増加した5種類の台木すべてで減少した(420Aのみ影響を受けなかった)。ワセンチュウは、3年目~4年目までは地上部のブドウ生産性に影響を与えなかったが、3~4年目では3種類の感受性台木のブドウ樹では新梢長と剪定重が低下した。ワセンチュウは3種類の抵抗性台木において新梢成長に影響を与えず、いずれの年のいずれの台木においても葉のガス交換速度と水ポテンシャルには影響しなかった。しかしながら、4年目でワセンチュウはすべての台木にわたる主要な影響として果実収量を低下させた。

A.Kono, A.Sato, M.Nakano, M.Yamada, N.Mitani, Y.Ban
Evaluating Grapevine Cultivars for Resistance to Anthracnose Based on Lesion Number and Length
pp. 262-268(Research Note) [
英文要旨原文]
[病斑の数と長さを基準とした炭疽病抵抗性についてのブドウ品種評価]
炭そ病は多湿地域におけるブドウ樹の最も重要な病害の一つである。収穫に対する搊害の危険性を低下させ、殺菌剤の使用量を削減するためには、抵抗性品種が必要である。Elsinoë ampelina (de Bary) Shearによる炭そ病に対するブドウ樹の抵抗性を、病斑数で評価した侵入に対する抵抗性と病斑長によって評価した定着に対する抵抗性の二つの方法で調査した。第一に、13品種における2種類の抵抗性を温室育成の挿し木を用いた3年間にわたる切除葉での検定において評価した。病斑数と病斑長の両方で抵抗性の遺伝成分が明らかとなり、Vitis vinifera品種に比べ種間雑種品種の間でより大きな表現型の変異があった。切除葉検定はV. vinifera系統間の病斑長における有意な差異を示した。ExoticとPerletteは中程度の抵抗性を示した。6品種の抵抗性を評価するために殺菌剤を使用していないブドウ園で病斑径を調査したところ、品種間に有意差が認められた。感受性品種の病斑形状はほとんど円形だったが、抵抗性品種では通常、上定形となった。結果は病斑の数と長さを基礎とした評価が大きな圃場試験の必要なしで炭そ病に対する抵抗性を信頼性のある予測が可能であること、V. viniferaは炭そ病に対し中程度の抵抗性を示すことを示した。

G.Ferrara, M.Fracchiolla, Z.Al Chami, S.Camposeo, C.Lasorella, A.Pacifico, A.Aly, P.Montemurro
Effects of Mulching Materials on Soil and Performance of cv. Nero di Troia Grapevines in the Puglia Region, Southeastern Italy
pp. 269-276 [
英文要旨原文]
[南イタリア プーリア地域の土壌とNero di Trojaブドウ樹の生産力に及ぼすマルチ資材の影響]
合成および有機マルチが土壌状態とNero di Trojaの樹体成長、生理、収量、果実組成に及ぼす影響について、2年間の研究を行った。有機栽培ブドウ園において、2種類の合成マルチ(ポリプロピレン製上織布および黒色ポリエチレン)と1種類の有機物マルチ(3-および6-cm厚のオリーブ絞りかす)をブドウ列に施用した効果を対照区(刈取除草)と比較した。試験を通して、土壌と葉分析、雑草椊生調査、およびマルチの椊物への害作用試験を行い、栄養成長活性、葉のガス交換と水分状態、収量および果実組成の測定を行った。オリーブ絞りかすはいくつかの土壌肥沃度に関する指標と樹体生理(気候コンダクタンス、蒸散および純光合成)に正の効果を示した。黒ポリエチレンと上織布は特に1年目は雑草を抑制したが、オリーブ絞りかすで同様な効果が得られた。収量と果実組成は、雑草刈り取りと比較して、有機および合成マルチのいずれにおいても影響を受けなかった。オリーブ絞りかすは、雑草を抑制し、土壌肥沃度を改良し、持続性の観点から受容されると考えられる。オリーブ絞りかすの雑草抑制作用の様式は、物理的および椊物毒性物質の放出を通しての椊物化学的なものである。

C.M. Cox, A.C.Favero, P.R.Dry, M.G. McCarthy, C.Collins
Rootstock Effects on Primary Bud Necrosis, Bud Fertility, and Carbohydrate Storage in Shiraz
pp. 277-283(Technical Briefs) [
英文要旨原文]
[シラー種の主芽壊死、芽の肥沃度および炭水化物貯蔵に及ぼす台木の影響]
2ヶ所の地域で3種類の交配種に接ぎ木されたシラー(Vitis vinifera L.)を使って、主芽壊死、芽の肥沃度、そして炭水化物貯蔵に及ぼす台木の影響を評価した。芽は冬の休眠期に切片を切り、花序原基数および主芽壊死の発生率を評価した。炭水化物の濃度を確認するために、休眠期に主幹や主枝、根を採取した。2ヶ所の地域のうち、1ヶ所では水分欠乏処理も行った。結果および収穫量は水分欠乏により影響を受けた。いずれの地域でも、台木の種類は、主芽壊死、結果そして炭水化物貯蔵量に影響した。

S. Brandon O’Daniel, D.D.Archbold, S.K.Kurtural
Effects of Balanced Pruning Severity on Traminette (Vitis spp.) in a Warm Climate
pp.284-290 [
英文要旨原文]
[温暖な気候で栽培されたトラミネット種における剪定強度の影響]
2006年および2007年において、454グラムの冬季剪定で維持された20、30または40節に再度の剪定による10節を加えた剪定強度に対する、トラミネット種の樹冠の構造、収穫量構成要素、果実成分、枝のサイズ、Ravazインデックス(剪定重量に対する収穫量の比率)そして真冬における主芽の耐寒性を測定した。剪定強度を40+10から20+10に強めた場合、1ヘクタールあたりの新梢は減り、新梢の間隔は広がった。枝あたりの葉数と葉層数は剪定強度を弱めるに従って直線的に増加した。枝あたりの房数および収穫量は剪定強度を弱めるに従い増加した。剪定強度は果実成分に影響しなかった。枝のサイズ、果実量あたりの葉面積は剪定により影響を受けなかったが、2007年の調査では、剪定強度を弱めるにしたがってRavaz インデックスは直線的に増加した。2007年には、剪定強度を強めることで、晩秋において、より多くの節が成熟し、真冬において、芽はより耐寒性が強くなった。この調査結果は、著しい発病による影響や果実成分への悪影響が見受けられない条件下において、米国中西部の南の地域では、主芽の耐寒性のわずかな減少はあるものの、収穫量を適正にすることから、40+10の剪定強度が適しているということを示している。

D.Preiner, J.K.Kontić, S.Šimon, Z.Marković, D.Stupić, E.Maletić
Intravarietal Agronomic Variability in Croatian Native Vitis vinifera L. Cultivar Grk with Female Flower and Seedless Berries
pp. 291-295(Technical Briefs) [
英文要旨原文]
[雌花と無核果実をもつクロアチア原産Vitis vinifera グルク種の品種内農業形質の変動]
クロアチア原産のVitis viniferaグルク種は、雌花を有する数少ない醸造用ブドウ品種のひとつであり、一つの房に2種類の果粒(有核の果粒[3.5g未満]と小粒の無核果粒 [0.7g未満])が形成される。本研究において、グルク種の品種内変動と、グルク種クローン間における収穫量と品質に及ぼす無核果粒の割合の影響を調査した。グルク種クローン間において無核果粒の割合に有意な差が認められた。無核果粒割合と果粒一粒重、果汁中の酒石酸量、遊離型揮発性テルペンの問には高い正の相関関係が認められた。これらの結果は、無核果粒の割合が高いクローンを選ぶことで、グルク種ワインの品質を向上させることができることを示している。

J.M.Meyers, G.L.Sacks, J.E.Vanden Heuvel
A Computational Approach for Balancing Competing Objectives in Winegrape Production
pp. 296-300(Technical Briefs) [
英文要旨原文]
[醸造用ブドウ生産における競合対象のバランスをとるための計算論的アプローチ]
葉層数や果実重に対する葉面積率などの操作可能な目標は、病気を減らしたり、収穫量を増加させたり、果実成分を改善させるといった特定の生産目標を達成するために、栽培管理作業の指導に用いられる。しかし、これらの目標は個々の生産者に対して適正化されていないばかりか、潜在的に矛盾する目標、たとえば病気を減らすためにフルーツゾーンに太陽光を増やす一方、果実の日焼けや、好ましくない香気成分を最小限に抑えるために果実への太陽光を最小限にするなど、に対し、どのようにバランスを取るかといったことは示されていない。本研究で示されるアプローチは、非優越分類遺伝的アルゴリズムとして知られている多目的最適化メソッドを使用することにより、これらの複数の目標のバランスをとる。このアプローチは生産者が現存の散布プログラムに使われる有効成分の量を最小限化すると同時に、リースリングの1,1,6-トリメチル-1,2-ジヒドロナフタレン(TDN)前駆体物質を減らすという競争関係にある目標を持つ仮想のシチュエーションで行われた。この論証モデルでは、以前数量化された房への散布量(CEFA)対TDN前駆体量の2種類の対比反応、そして以前数量化されたCEFA対果実上の残留物量の1種類の対比反応を使用した。CEFAと果実への散布量の最適目標は、最小限のTDN潜在量対最小限のスプレー有効成分の対比バランスであると算出された。2番目の分析では、生産目標間の最適なバランスを維持するための目標を最新のものにするためには、圃場での調査結果から得られる最新の知識をどのように使うべきかを示した。



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