American Journal of Enology and Viticulture
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Volume 66, No.3(2015)
Jussara M. Coelho, Patricia A. Howe, Gavin L. Sacks
A Headspace Gas Detection Tube Method to Measure SO2 in Wine without Disrupting SO2 Equilibria
pp. 257-265 [
英文要旨原文]
[SO2平衡を乱さないワイン中のヘッドスペースガス検出チューブ法によるSO2測定法]
 ワイン中の分子状及び遊離亜硫酸(SO2)を測定するヘッドスペースガス検出チューブ(HS-GDT)法は、市販の工業用の安全な比色用チューブを使用した、安価で容易な方法である。シリンジはワインをサンプリングし、閉鎖したヘッドスペースを造るために使用するが、ヘッドスペースは、平衡が得られた後、GDTから追い出される。SO2の蒸気相濃度(PSO2)は製造者のプリントしたマーキングから決定する。そして、ワインの分子状SO2濃度はヘンリーの法則係数を基に、より正確には検量曲線から求める。典型的なワインのエタノール濃度はSO2のpKa値に顕著に影響するが、以前報告したように、ヘンリーの法則係数には影響しない。モデルワイン及び水溶性緩衝液における検量曲線は、適当なpKa使用時には区別がつかない。検量曲線の最良の結果は、200 mLヘッドスペースのモデルワイン(5~40 mg/L遊離SO2、0.14~1.12 mg/L分子状SO2)で、満足できる直線関係(r2 = 0.99)の再現性(分子状SO2が> 0.4 mg/Lで平均CV = 8%)と検出限界(0.21 mg/L分子状SO2)を示す。HS-GDTおよび空気-酸化(A-O)により測定した分子状SO2は、白およびブラッシュワインにて強い相関(r2 = 0.97)を示し、赤ワインでは相関(r2 = 0.72)は貧弱であった。赤ワインの平均A-O値はHS-GDT値の二倊であった。A-OおよびHS-GDTによる分子状SO2値の相違はアントシアニン-バイサルファイト・アダクト生成による積算分子状SO2の減少と良く相関し(r2 = 0.936)、A-O分析中に起こるアントシアニン-バイサルファイト・アダクト分離の仮説を良く支持する。この平衡を乱さなければ、HS-GDTは正確に遊離および分子状SO2値を示す。

M.G. Cook, Y. Zhang, C.J. Nelson, G. Gambetta, J.A. Kennedy, and S.K. Kurtural :
Anthocyanin Composition of Merlot is Ameliorated by Light Microclimate and Irrigation in Central California
pp. 266-278 [
英文要旨原文]
[中央カリフォルニアにおいてメルローのアントシアニン組成は光微気候と灌漑により改善される]
試験は、生産性、果皮アントシアニン濃度と組成そしてヘクタール当たりの単価における機械摘葉(コントロール、開花前または結実後)の時期と灌水量(推定されたブドウ園蒸発散量(ETc)の0.8の持続的な制限灌漑(SDI)または、萌芽から結実が0.8、結実からベレーゾンが0.5そしてベレーゾンから落葉が0.8の制限灌漑(RDI))の相互影響を測定するために、中央カリフォルニアにおいて、メルローに対して行われた。開花前の摘葉(開花前の~100 GDDに適用)は、試験した両年において果実ゾーンの光合成有効放射の少なくとも20%を一貫して維持した。一方、結実後の摘葉は、複数年に渡って一貫しなかった。RDI処理は果粒質量を減少させた。一方、結実後の摘葉は果皮質量を減少させた。開花前の摘葉は、どちらの年においても、収量に影響しなかった。照射された葉の面積と果実質量に対する葉面積の比(m2/kg)は摘葉にともなって減少した。RDIは一貫して果汁の可溶性固形物を増加させた。アントシアニン濃度は、両年において、開花前の摘葉により増加したが、灌漑処理は効果が無かった。アシル化そしてヒドロキシル化アントシアニンの比率は、摘葉によって影響されなかった。両年において、SDIはジヒドロキシル化アントシアニンを増加させ、一方、RDIはトリヒドロキシル化アントシアニンを増加させた。開花前の摘葉は、RDIと組み合わせた時、ヘクタールあたりのトータル果皮アントシアニン(TSA)を最大にした。一方、非摘葉とSDIは最も低いTSAを生産した。1ユニットのTSAを生産するコストは、開花前の摘葉とRDIを組み合わせることにより、非摘葉とRDIの組み合わせと比べて、35%引き下げられた。この研究は、温暖な地域の赤ワイン用ブドウの生産者に、アントシアニン濃度とヒドロキシル化を高める一方で、灌漑の縮小と機械化を通して、投入コストを引き下げるために、どのように果実を管理するかに関する情報を提供する。

J.J. Willwerth, A.G. Reynolds, and I. Lesschaeve
Sensory Analysis of Riesling Wines from Different Sub-Appellations in the Niagara Peninsula in Ontario
pp. 279-293 [
英文要旨原文]
[オンタリオ州ナイアガラ半島における異なる地区アペラシオンのリースリング・ワインの官能評価]
 リースリング・ワインは品種特徴に強いテロワール効果が指摘される。2005年にオンタリオ州ワイン卸商品質同盟は、ナイアガラ半島の土壌と気候により、推定の地区アペラシオンを作成した。本研究の目的は指定地区アペラシオンの相違が有効かどうかを決めることである。各地区アペラシオンを代表する10の商業的リースリング・ブドウ園から、2005~2006に製造されたワインを試験した。ブドウ園はGPSを使用し輪郭を描き、75~80の代表的ブドウ樹は格子状抽出法で地理参照された。一つの仮定は、ブドウ樹の水ステータスがテロワールの主要な役割を果たすことである。従って、ワインは葉水ポテンシャル基準で、同様の水ステータスのブドウ樹から造られた。標準的ワイン製造方法は、醸造効果を最小化し設定された。両ビンテージの地区アペラシオンが影響するワインの官能プロファイルは、訓練されたパネルにより記述的官能分析を用い行われた。2005年ワインは13種のアロマ、フレーバー、味が、2006年ワインは11種のアロマ、フレーバー、味が、地区アペラシオンの相違を示した。両ビンテージに於いて、マストとワインは地区アペラシオン毎に、化学組成(滴定酸度、pH、遊離のあるいは潜在的揮発性テルペン類)でも異なった。主成分分析および最小二乗回帰分析にて、特異の官能的および化学的寄与物質およびブドウ園の変化が、異なる地区アペラシオンのワインと相関した。しかし、ワインはナイアガラ半島の一般的な地域(Lakeshore、EscarpmentおよびLake Plain)にグループ化された。ワインはそのアペラシオン毎に同様の官能プロファイルが認められ、ナイアガラ半島の地域オリジンに分類され、地域ごとに栽培シーズンに関わらず、特異的な品種特徴を示すことが示唆された。

C.L. Richter, A.D. Kennedy, L. Guo, and N. Dokoozlian
Metabolomic Measurements at Three Time Points of a Chardonnay Wine Fermentation with Saccharomyces cerevisiae
pp. 294-301 [
英文要旨原文]
[サッカロミセス・セレビシエによるシャルドネ・ワインの発酵3ポイントのメタボロミック測定]
 ブドウ果汁のワインへの変換は、ブドウ樹Vitis viniferaと酵母、特にSaccharomyces cerevisiae間の複雑な代謝関係による。ブドウと酵母の関係から生ずる最終分子組成は、ワインのフレーバー、アロマ、口当たりに寄与する。本研究では、シャルドネのワイン発酵の3時期(4、9、15日)の酵母菌体内外の代謝物を収集し、エクソ-およびエンド-メタボロームの複雑な関係を調べた。エクソ-メタボロームにて227代謝物を、エンド-メタボロームにて404代謝物を同定、追跡した。各代謝物は代謝経路あるいは代謝物質群ごとにグループ化された。発酵時期毎に顕著な代謝変化があり、酵母代謝経路は発酵の進行と連携・調節されていることが示唆された。本研究でのワイン発酵期間の一次及び二次代謝物の種々の利用と生産の分析は、代謝エンジニアリングおよび工業的バイオテク・プロセスと細胞コミュニケーション機構の関係のキーとなる理解を提供する。

M.C. Buelow, K. Steenwerth, L.C.R. Silva, and S.J. Parikh
Characterization of Winery Wastewater for Reuse in California
pp. 302-310 [
英文要旨原文]
[カリフォルニアにおけるワイナリー廃水の特徴と再利用]
現在、米国の30%以上が旱魃状態であり、これは将来の社会、経済、環境的に深刻な衝撃がある。米国南西部の旱魃の増大は、ワイン業界を含む農業での廃水の再利用への関心に拍車をかけている。ここに示すのは、カリフォルニアの栽培家および醸造家をサポートする、処理ワイナリー廃水(WWW)再使用における、最初のデータセットである。データはカリフォルニアWWWの詳細を提供し、土地利用の利点とリスクを評価できるように、特にサニタリーを重点的に示した。Ukiah、ナパ、ローダイ、キングシティ、Paso Roblesの18ワイナリーから20ヶ月に亘り、毎月サンプリングを行った。サンプルは物理化学的および生物学的処理前後に収集し、pH、電気伝導度(EC)、陽および陰イオン濃度、紫外線吸収(SUVA254)、溶存酸素(DOC)、生物的酸素要求量(BOD5)を測定した。WWWのpHは3~12の広い範囲で変化した。有機化学パラメーター(SUVA254、DOC、BOD5)は、処理が効果的に有機炭素を椊物や土壌にネガティブな影響を与えないレベルに低下させたことを示した。WWWの陽イオン濃度(Na+、K+、Ca2+、Mg2+)は処理により減少しなかった。これらのデータは溶存塩類がWWWの再利用に難題をもたらすことを確認した。しかし、WWWの塩濃度は中程度(平均ECは1.0 dS/m)であり、その値は常に、一般的なワイン用ブドウ台木に対する閾値や土壌塩濃度の危険レベル以下であった。これらWWWの状況は、カリフォルニアでの水処理オプションとして推奨可能である。

E.P. Pérez-Álvarez, E. García-Escudero, and F. Peregrina
Soil Nutrient Availability under Cover Crops: Effects on Vines, Must, and Wine in a Tempranillo Vineyard
pp. 311-320 [
英文要旨原文]
[被覆作物下の土壌養分有効性:テンプラニーリョブドウ園のブドウ樹、マストそしてワインに対する影響]
 被覆作物は土壌養分をブドウ樹と競合する可能性があり、ゆえに、ブドウ樹の生長とマストそしてワインの質に影響する可能性がある。この研究の目的は2つの異なる被覆作物が、土壌のN、P、KそしてMgの有効性、そしてブドウ樹の栄養状態、樹勢、収量そしてマストとワインの質に及ぼす影響を評価することである。試験は、スペインのラ・リオハのテンプラニーリョを栽培しているブドウ園において、3つの処理、すなわち、イネ科の被覆作物(大麦)、マメ科の被覆作物(クローバー)そして通常の耕うんを用いて実施された。土壌の硝酸塩の展開とP、K、Mgが測定され、そして被覆作物のトータルバイオマスと養分含量が測定された。我々は、葉の養分含量、ブドウ樹の樹勢、収量そしてマストとワインの質もまた評価した。被覆作物によるP、K、Mgの取り込みは、それら養分の土壌有効性を下げなかった。そして、ブドウ樹のそれらの濃度に影響しなかった。大麦の被覆は、最初の年以降、土壌窒素の有効性を下げ、そして3年目における葉窒素とブドウ樹の樹勢を減少に導いた。増加したポリフェノール含量とカラー強度は4年目の大麦処理において観察され、そしてこれらの変化は、ワインよりもマストにおいてより有意であった。クローバー処理は、2から4年にわたって土壌窒素の有効性を増加させ、3年目と4年目の葉窒素含量を増加に導いた。被覆作物として大麦を使用することは、土壌窒素を下げ、マストとワインの質を改善するための実現可能な選択になり得るであろう。しかし、これらの効果は被覆作物の導入後の進展に時間を要する。
P.A. Howe, S.E. Ebeler, and G.L. Sacks
Review of Thirteen Years of CTS Winery Laboratory Collaborative Data
pp. 321-339 [
英文要旨原文]
[ワイナリー実験室共同データの13年間の調査
ワイン工業の実験室の試験データについて、78ワインについて13年間のデータを再調査した。異常値を除外後、実験室内の正確さ(繰り返し性)および実験室毎の正確さ(再現性)を求めるため、アルコール、滴定酸度、揮発酸度、総亜硫酸、遊離亜硫酸、リンゴ酸、比重、pH、残糖、ブドウ糖+果糖、420および520 nmの吸光度を測定した。再現性は繰り返し性より3.6~57.8倊高かった。再現性はHorwitz比(HorRat)で評価し、アルコール、滴定酸度、総亜硫酸だけは受容できる値(平均HorRat < 2)であった。zスコアの測定は、特に比重の非正常分布を証明し、これは密度の混乱によるようであった。再現性は長期的には信頼性を変化させなかったが、例外があり、エタノール測定の上正確さは、年間0.0084%(v/v)減少した。一方、滴定酸度、pH、リンゴ酸測定は、年間0.0089%(酒石酸)、年間0.0008 pH、年間0.13 gリンゴ酸/L上昇した。繰り返し性及び再現性の上正確さは、被験物質の濃度が高いと上昇した。例外は、アルコール、揮発酸度(再現性)、総亜硫酸(繰り返し性)であった。アルコール、滴定酸度、遊離と総亜硫酸、揮発酸の測定方法と器具は、時間と共に変化した。多くの被験物質で、方法により顕著に変化したものがあり、これは正しく行う方法で行えば制御できることであり、例えば、高い糖濃度における沸点測定方法により、高い見かけのアルコール濃度が出る場合である。測定方法の正確さの評価は、真の値が分かる対照サンプルがないので上可能であった。結果は、いくつかの分析に対する、分析パフォーマンスの業界全体にわたる改善の必要性とメソッドパフォーマンスに対して基準ガイドラインを採用する潜在的利点を示している。

E. Gerzon, I. Biton, Y. Yaniv, H. Zemach, Y. Netzer, A. Schwartz, A. Fait, and G. Ben-Ari
Grapevine Anatomy as a Possible Determinant of Isohydric or Anisohydric Behavior
pp. 340-347 [
英文要旨原文]
[等水性または非等水性挙動の決定因子の可能性のあるブドウ樹の解剖学的構造]
 等水性椊物は、迅速な気孔の閉鎖を通して一定の水ポテンシャルを維持する。それに対して、非等水性椊物は、非常に低い水ポテンシャルにおいてのみ、その気孔を閉じる。しかし、同一種の異なった栽培品種の中における、等水性と非等水性挙動の違いは上明確である。この研究は、Vitis vinifera種の非等水性のシラーズと等水性のグルナッシュにおける長期の水欠乏ストレスに対する生理的応答を比較した。椊物は、2011年と2012年の夏の間、60日間の上足灌漑(良好に灌漑された条件下の25%の水消費)にさらされた。生理的測定、水ポテンシャル、葉のガス交換、キャノピー面積、葉の老化、穂梗の特徴、そして形態学的特徴が分析された。気孔伝導度は、それぞれ、昼の穂梗と夜明け前の葉の水ポテンシャルのすべての値において、シラーズよりもグルナッシュの方が一貫して低かった。シラーズは、水欠乏に対する応答において、グルナッシュより大きな栄養生長と少ない落葉を示した。解剖学的構造解析は、グルナッシュが、シラーズよりも大きな木部導管の直径、水透過率、そして気孔密度を持つことを明らかにした。これらの結果は、等水性と非等水性挙動が、おそらく、椊物が水欠乏ストレスに対応するために使用する別のメカニズムというよりも、明確に決められた、時間に制御された応答であることを示唆している。等水性椊物において示される水欠乏に対する迅速な応答は、それらが、非等水性椊物よりも、致命的な木部の塞栓に対して脆弱であるが故かもしれない。従って、促進される応答は等水性椊物に対し、水欠乏ストレスを回避し、木部の空洞化のリスクを最小にすることを可能にする。しかし、長引く干ばつによる中程度のストレスを切り抜けるための椊物の能力を低くするであろう。

K. Shellie
Foliar Reflective Film and Water Deficit Increase Anthocyanin to Soluble Solids Ratio during Berry Ripening in Merlot
pp. 348-356 (Research Note) [
英文要旨原文]
[葉面光反射フィルムと水分欠乏はメルローの果粒成熟期の可溶性固形物に対するアントシアニンの比率を増加させる]
 温度上昇は赤色果皮の果粒における可溶性固形物に対するアントシアニンの比率を減少させる可能性がある。そして、ブドウ生産地域の温暖化傾向は、変化した比率の果実から製造されたワインのアルコールに対するカラーのバランスに関する懸念を高めている。この研究は、5年間にわたって、上足灌漑のメルローブドウ樹における可溶性固形物に対するアントシアニンの比率に及ぼす葉面光反射フィルムの影響を調査した。ブドウ樹は、推定された水要求量の90または35%供給するために灌漑され(それぞれDI90とDI35)、そして繰り返し分割区法により、カオリン系の光反射フィルムをスプレーするか、またはスプレーしないままのどちらかにした。2008~2010年シーズンの間、作物荷重は、開花前に房の50%を除くことによって、それぞれのサブプロット内のブドウ樹の半分において調整された。作物荷重に関係なく、光反射フィルムは、可溶性固形物が18から24%の時に、DI90とDI35において可溶性固形物に対するアントシアニンの比率を増加させた。光反射フィルムは、水分欠乏にともなう収量または滴定酸度の減少を軽減しなかった。そして、それはブドウ樹あたりの収量に影響しなかった。しかし、それは、房あたりの果粒数を減少させ、特に、DI35-灌漑ブドウにおいて減少させた。DI90-灌漑ブドウ樹において、減少した房あたりの果粒数は、果粒あたりの果粒フレッシュ重量とアントシアニン含量の増加と関連していた。摘房は、DI35灌漑においてのみ、収穫時の果粒組成に影響した。成熟期の可溶性固形物に対するアントシアニンの比率は、DI90灌漑下の椊物より、DI30灌漑下の椊物の方が高かった。まとめると、上足灌漑と組み合わせた葉面光反射フィルムは、高い太陽照射をともなった乾燥条件下で、可溶性固形物に対するアントシアニンの比率を増加させた。

S. Chescheir, D. Philbin, and J.P. Osborne
Impact of Oenococcus oeni on Wine Hydroxycinnamic Acids and Volatile Phenol Production by Brettanomyces bruxellensis
pp. 357-362 (Research Note) [
英文要旨原文]
[ワインのヒドロキシ桂皮酸へのOenococcus oeniの影響とBrettanomyces bruxellensisによる揮発性フェノールの生産]
市販Oenococcus oeni株によるヒドロキシ桂皮酸の酒石酸エステル(TAE-HCA)の破壊能力とBrettanomyces bruxellensisによる揮発性フェノール生成への影響を調べた。市販O. oeni 10株を評価した所、O. oeni Viniflora Oenos (VFO) 1株のみがピノノワール・ワインにおける増殖中に、TAE-HCAを分解できた。この分解により、ワイン中に対応する遊離のヒドロキシ桂皮酸の増加が認められた。ピノノワール・ワインにおけるB. bruxellensis UCD-2049の増殖は、VFOにてMLFを行った所、高レベルの4-エチルフェノールおよび4-エチルグアイアコールを生じたが、MLFをしなかったワインおよびO. oeniでMLFを行ったワインではTAE-HCAの破壊が起こらず、エチルフェノールの生成は顕著に少なかった。ワイナリーは健全なワイン製造手段を行い、Brettanomycesの増殖を防止すべきであるが、ワイン中の遊離ヒドロキシ桂皮酸を最小にすれば、もし、Brettanomycesの増殖があっても、揮発性フェノールのワイン中の生産の最小化が可能である。この達成を助ける手法として、TAE-HCA分解能の無いO. oeniの使用は、簡単で実用的な方法である。

D. Tomasi, F. Battista, F. Gaiotti, D. Mosetti, and G. Bragato
Influence of Soil on Root Distribution: Implications for Quality of Tocai Friulano Berries and Wine
pp. 363-372 [
英文要旨原文]
[根の分布に及ぼす土壌の影響:トカイ・フリウラーノブドウとワインの質に対する影響]
 SO4台木に接ぎ木されたトカイ・フリウラーノ栽培種は、イタリアColli Orientali del Friuli AOCの4つの土壌タイプ(SU1 からSU4)において3年間、調査された。根が、異なった土壌特性に対するブドウ樹の応答を、どのように仲介するかをより良く理解することを目的として、ブドウ樹の根のシステム、土壌の化学的そして物理的性質、土壌水分の状況、ブドウ樹の挙動そしてブドウとワインの質が調査された。気候は、調査地域で均一であった。そして、気象の影響は年単位で評価された。我々の結果は、土壌がブドウ樹に対する水の有効性において主要な役割を果し、ブドウ樹の収量構成要素、栄養生長、ブドウ樹バランス、ブドウ成分、そしてワインセンサリープロフィールに影響することを示した。根の観察は、ブドウ樹の挙動とワインの特徴における変動についての情報を供給した。良好で安定したワインの質が、深い根のシステム(SU1とSU4)の発達を可能にする土壌においてのみ得られた。これらの土壌は、乾燥したシーズンにおいても十分な品質のワインを生産した。乾燥した年において、栄養生長と生殖生長の間のアンバランスが、浅い土壌において起こった。そしてその場合、根のシステムは薄く、表面的で(SU2)、上十分な品質のブドウとワインをもたらした。逆に、根のシステムがより密集し、土壌プロフィールの隅から隅まで分布した時(SU3)、ワインはより興味深い特徴を示した。これらの結果は、土壌*気候環境に対するブドウ樹の応答を評価する時、根の特徴を分析する重要性を明示する。

J. Nelson, H. Hopfer, G. Gilleland, D. Cuthbertson, R. Boulton, and S.E. Ebeler
Elemental Profiling of Malbec Wines under Controlled Conditions Using Microwave Plasma-Atomic Emission Spectroscopy
pp. 373-378 [
英文要旨原文]
[マイクロウエーブを使用した制限条件下でのマルベック・ワインの元素プロファイル]
マイクロ波プラズマ発光分光分析法(MP-AES)を使用し、アルゼンチンと米国産のマルベック・ワインの元素分析を行った。分析した6元素(Sr, Rb, Ca, K, Na及びMg)について、アルゼンチンのメンドーサ産およびカリフォルニア産のマルベック・ワインを比較した。2つの国のマルベック・ワインは、部分最小二乗判別分析による元素分析プロファイルにより、区別することができた。我々の知るところでは、これはMP-ASE分析により、6種の異なる元素を使用しマルベック・ワインの地理的由来を決定した最初の報告である。

C.M.L. Joseph, E.A. Albino, S.E. Ebeler, and L.F. Bisson Brettanomyces bruxellensis Aroma-Active Compounds Determined by SPME GC-MS Olfactory Analysis
pp. 379-387 [
英文要旨原文]
[SPME GC/MS嗅覚分析によるBrettanomyces bruxellensisのアロマ活性物質の決定]
Brettanomyces 95株について、ポジティブなアロマの特徴(例えば、スパイシー、フルーティ、フローラル)を一貫して与えるかどうかを調べた。これらの株は制限培地で培養され、5吊の評価者が各株の特徴をアロマ生産により評価し、その後、得られた記述的評価をSPME GC/MS分析とカップルさせた。その結果、どの株もポジティブなアロマを生産していなかった。更に、複数の芳香族アミノ酸およびヒドロキシ桂皮酸を添加した培地で培養したところ、この条件では、低レベルだが他の株と区別可能なポジティブな香気を与える株が認められた。更にポジティブなBrettanomycesの特徴を持つ成分を明らかにする為、5株のB. brexellensisにより生産された揮発性アロマ化合物について、SPME GC/MS分析を行った。この分析には9吊による嗅覚分析(スニッフィング)もカップルさせ、最もBrettanomycesの特徴と関連する化合物を同定する為、同じ化合物について異なる評価者による記述的評価を行った。選択株はヒドロキシ桂皮酸であるコーヒー酸、クマル酸そしてフェルラ酸および/または芳香族アミノ酸であるフェニルアラニン、チロシンを添加した合成培地で分析した。22種の化合物はアロマ・インパクトがあるとされ、これには数種の脂肪酸、アルコール、エステル、テルペン、アルデヒド類と同様に、フェノレとして良く知られるエチルフェノールおよびビニルフェノールも含まれた。

M. Webber-Witt, M. Deckwart, C. Carstens, L. Eichhorn, K. Brockow, V. Schaefer, A. Paschke-Kratzin, and M. Christmann Effect of Various Treatments and Filtration Methods on Eliminating Residues of Casein-based Fining Agents from Wine
pp. 388-392 [
英文要旨原文]
[カゼイン・ベース清澄剤の残留物除去の種々の処理と濾過の影響]
ワイン製造に使用されるミルク・ベースの清澄剤は、アレルギー反応の引き金になる可能性がある。もしこれが最終産物に残留すると、法規制によっては、これら物質のワイン・ラベルへの表記が義務となる可能性がある。このラベル表記は、アレルギーのある消費者がそのワインを避けることを助ける。本研究では、ワインにミルク蛋白含有清澄剤を使用後、ワイン中のアレルギー性残留物を除去する数種の方法の有用性を調べた。ワインの製造方法は国や地方によって異なる。そして、評価基準も異なるので、最悪のシナリオも考慮し、高用量使用も含めミルク由来アレルギー物質の濃度軽減のため、種々の濾過処理および他の処理を行った。ワインのミルク蛋白の検出はELISAを使用し、in vivoのアレルギー試験も行った。本研究で使用した全ての濾過方法で、赤ワイン及び白ワインからELISAで検出可能な濃度は検出されなかった。フラッシュ・加熱処理法あるいはシリカゾル法で大量のカゼインを使用した場合を除き、本研究で評価した他の方法も、同様に効果的であった。しかし、フラッシュ・加熱処理方法の後、追加の殺菌濾過をする、あるいはシリカゾル清澄化でも、使用カゼイン蛋白を減少すれば、検出上能のレベルまで減少した。

M. Gil, M. Quirós, F. Fort, P. Morales, R. Gonzalez, J.M. Canals, and F. Zamora
Influence of Grape Maturity and Maceration Length on Polysaccharide Composition of Cabernet Sauvignon Red Wines
pp. 393-397 (Research Notes) [
英文要旨原文]
[カベルネ・ソーヴィニヨン赤ワインの多糖組成に及ぼすブドウ成熟度とマセレーションの長さの影響]
 カベルネ・ソーヴィニヨンブドウは、3つの異なった成熟度(ベレーゾン後の~3、5そして7週)において収穫され、そしてミクロスケールのワイン発酵に使用された。それぞれの成熟度に対して、4つの異なったマセレーションの長さ(1、2、3そして4週)が、ワイン多糖の組成に及ぼすマセレーションの長さとブドウ成熟度の両方の影響を評価するために、3セットずつ用いられた。ワイン多糖の総濃度は、高分解サイズ排除クロマトグラフィー‐屈折率検出により推定した。そして、多糖を酸加水分解した。遊離した中性単糖はHPLC-RIDクロマトグラフシステムを用いたイオン排除クロマトグラフィーにより分析された。ワイン多糖の総濃度は、マセレーションの長さとブドウ熟度の増加にともなって増加した。酵母多糖(マンノプロテイン、MP)といくつかのブドウ多糖(アラビノースとガラクトースを多く含む多糖、PRAGs)の両方が、マセレーションの長さにともなって増加した。しかし、ブドウ成熟度は、PRAGsとMPsに異なったかたちで影響した。すなわち、PRAGsがブドウ成熟にともなって増加したのに対して、酵母多糖では反対であった。

H. Takase, K. Sasaki, H. Shinmori, A. Shinohara, C. Mochizuki, H. Kobayashi, H. Saito, H. Matsuo, S. Suzuki, and R. Takata Analysis of Rotundone in Japanese Syrah Grapes and Wines using Stir Bar Sorptive Extraction (SBSE) with Heart-Cutting Two-Dimensional GC-MS
pp. 398-402 (Research Notes) [
英文要旨原文]
[SBSEを使用したハート・カッティング2次元GC-MSによる日本のシラー・ブドウとワインのロタンドンの分析]
ロタンドンは酸素化されたセスキテルペンの一種であり、ワインに胡椒アロマを与える。ブドウやワインに含まれる微量のロタンドンを、効率的で容易に分析する方法を開発した。使用した方法は、固相抽出のような前抽出工程をせず、スターラーバー吸着抽出法(SBSE)を使用した、ハート・カッティング2次元GC-MS法である。ブドウの検出限界は2.1 ng/kg、定量限界は6.5 ng/kgであり、ワインの検出限界は2.4 ng/kg、定量限界は7.2 ng/kgであった。カベルネ・ソービニヨンのブドウとワインからのロタンドンの回収率は各々、106%(ブドウへの添加は120 ng/kg)および96%(ワイへの添加は120 ng/L)であった。Uedaからのシラー・ブドウおよびワインのロタンドン濃度(各々、2342 ng/kgおよび232 ng/Lまで)は、豪州シラーのブドウおよびワインの最大濃度より高いことが示された。今回の結果は、何か日本の環境因子にシラー・ブドウのロタンドン蓄積を促進する作用があり、シラー・ブドウにおけるロタンドン蓄積の地域的特徴研究の重要性を強調するものである。



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